歴 史 ・ 成 立 |
道教の思想、神学が最も栄えたのは、隋唐五代の時期で、日本からは多数の留学生が送られ、中国の考え方が
持ち帰られ使われた時期である。
北宋(11世紀)の初頭には、真宗皇帝(熱烈な道教の信奉護持者であった)の勅命を受けて当時第一級の道教学者、張君房
が道教教理百科全書『雲笈七籤(ウンキュウシチセン)』を編集している。そこには、隋唐時代の五経(易・書・詩・礼・春秋)
を中心とする儒教経典解釈学や、中国仏教学(天台・華厳・浄土・禅)の教義を導入した道教の神学教理、思想・宗教哲学
が書かれている。
12世紀には南宋以後に華北新道教(全真教など)が成立。
日本には、邪馬台国の時代に鬼道という名前で道教呪術が入り込んでいたといわれる。 そして、陰陽道の呪術や神仙道にに受け継がれたり、山岳信仰に結びついたりした。日本道教の流れを二つに分けるとすれば、占星術・方位・反閇(ヘンバイ)・祓い・人形などの具体的呪法を道教から受け継いだのが陰陽道であり、道教の神通力開発法を中心に受け継いだのが神仙道だといわれる。
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思 想 |
天・地・水
道教は特に水を重視する。儒教の世界観は天・地・人であるが、道教では天・地・水だといわれる。
2〜3世紀の漢魏の時代の三張道教(五斗米道という教団をおこした張梁(チョウリョウ)・
張衡(チョウコウ)・張魯(チョウロ)の教え)の神学教理を解説した、『三国志』魏書の張魯伝の注に
引く『典略』によると、
「その請祷の法は、病人の姓名を書き、罪に服するの意を説く。(首過の書)三通を作り、
その一は之を天に上りて(マツりて)山上に著け(ツけ)、その一は之を地に埋め、
其の一は之を水に沈む。之を三官手書きと謂ふ」
とあり、ここでは天と地と水がそれぞれ神格化されて「三官」と呼ばれ、この三官に対する「首過」(おのれの罪過の自首)の文書を三官手書きと呼んでいる。
そして道教の神学教理では、人間は天と地と水に対して罪を重ねることなしにはこの世に生きられないとしている。その犯罪行為を天地水の三官はいつも取り調べ、受け裁いている。だから人は、三官に自首し、許しを請うことで初めて安らぎ、健康に寿命を全うすることができるそうだ。
また道教では、水の他に海、もしくは海の神も大変重要であり、中国古代の神僊信仰では海を舞台にした。
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参
考 |
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福永光司・
千田稔・
高橋徹 |
朝日新聞社 |
2003年10月 |